背中の筋肉を鍛える
代表的な種目に懸垂があります。
懸垂を行うには
ある程度の上半身の筋力が必要になり
若いときに
あまり運動に慣れ親しんでない人が
トレーニングをはじめた場合には
できないことがほとんどです。
この場合
同じような動きの
プルダウンマシンがおすすめされます。
では
プルダウンで
筋力を向上させていけば
いつかは
懸垂ができるようになるのでしょうか?
プルダウンで懸垂ができるようになる!?
こちらの懸垂ではアスリートを対象に
懸垂とプルダウンを比べています。
(1)
結論から言うと
プルダウンで懸垂はできるようになる
可能性は十分にありそうです。
- 懸垂の最大反復回数
- ラットプルダウンの1RM※1
- 80%1RMでのラットプルダウンの回数
- 体重の重さのラットプルダウンの回数
これらの変数でトレーニングしてもらい
それぞれの関係を調べてます。
懸垂の回数は
体重分のラットプルダウンの回数と
有意に相関関係がありました。
ということは
体重分のラットプルダウンをこなせれば
懸垂もできるかもしれません。
しかし
懸垂の反復回数と1RMラットプルダウン、80%RMのラットプルダウンは
相関関係がなかったそうです。
つまり
高強度のラットプルダウンができても
懸垂の回数が増えるとは限らない…
例えば
80kgの人が80kgのプルダウンで鍛えて
5回だった懸垂が6回→7回→8回みたいに
レベルアップするとしても
1RM120kg(マッチョやなw)とか
80%1RM96kgとかでかんばっても
懸垂は5回のままみたいな…
(そんなことってある!?)
ちなみに
わたしは体重80kgぐらいで
50kgの過重をしてトータル130kgで
懸垂が5回はできますが
プルダウンを130kgではできません。
※2
そして
懸垂の回数は体重や脂肪量が少ない方が
多くできています。
1RMラットプルダウンは
体重が重く筋肉量の多い方が
強くなりました。
懸垂は上肢で体を引き上げる運動ですが
ラットプルダウンは脚を固定して
バー(重さ)を引き下げる運動です。
つまり
懸垂では体重が重いことが不利になり
逆に
ラットプルダウンでは
土台が安定するため有利に働きます。
懸垂の回数が多くできた人たちは
懸垂の回数が少なかった人たちに比べ
体重や脂肪量は少なかったそうです。
また
体重分のラットプルダウンは多くでき
体重比の1RMラットプルダウンも
強くなりました。
ということから推測されるに
懸垂とラットプルダウンは
相関してる部分がありますが
筋力が弱い人が懸垂ができなくて
ラットプルダウンで鍛えた場合
体重が重い人に比べて
体重が軽い人の方が
すぐできるかもしれません。
※1 1RM=1回ができる重さ
ラットプルダウンの1RMなんて普通はからないよね。
※2 体重分のラットプルダウンも10回できるかどうか…
絶対にプルダウンは体重重い人が有利
手幅(グリップ幅)の目安となる
研究があります。
(2)
順手(プロネイティドグリップ)の
ラットプルダウンで
- 肩幅(ナロウ)
- 肩幅の1.5倍(ミディアム)
- 肩幅の2倍(ワイド)
この3つの手幅で筋肉の活動をみています。
- 上腕二頭筋
- 僧帽筋
- 広背筋
- 棘下筋
動き全体では
これらの筋肉はどの手幅でも
同様に活性化しました。
上腕二頭筋は
ナロウに比べて
ミディアムが活動的だったそうです。
ポジティブ局面※3でも
上腕二頭筋は
ナロウに比べて
ミディアムが活性化しました。
ネガティブ局面※4では
ミディアムが
他のグリップに比べて
同等か高い活動でした。
また
ナロウとミディアムのグリップでは
実験で使った6RMの重さは※5
同じぐらいでしたが
この2つに比べて
ワイドグリップでは
約4%低くなりました。
プルダウンでは
ワイドグリップで行うことで
広背筋を刺激できるという
イメージがありますが
この実験では
そこまで効果的ではなかったそうです。
またナロウグリップの方が
上腕二頭筋は活性化しそうですが
ミディアムグリップの方が活性化してます。
また
ワイドグリップでは
扱える重さが軽くなっていることも踏まえ
(懸垂につなげる場合とか)
ミディアムグリップ(肩幅の1.5倍)が
ラットプルダウンでの
推奨の手幅となります。
※3 ポジティブ局面
筋肉が縮みながら力を発揮する局面
プルダウンや懸垂では引っ張るとき
コンセントリックとも言う。
※4 ネガティブ局面
筋肉が伸ばされながら力を発揮する局面
プルダウンや懸垂ではおろすとき
エキセントリックとも言う。
※5 6RM=6回できる重さ
ラットプルダウンを行うことで
懸垂ができるようになる
可能性はあります。
体重が軽い人の方が効果的と思われ
ラットプルダウンで目指すウエイトは
自分の体重分です。
またラットプルダウンでの手幅は
広背筋や上腕二頭筋を刺激するには
肩幅の1.5倍が目安となります。
以上
『プルダウンで筋力が向上したら懸垂はできるようになるのか?』
でした。
Yusuke Yamawaki(山脇 悠佑)
参考文献
(1) Sanchez-Moreno M1, Pareja-Blanco F, Diaz-Cueli D, González-Badillo JJ.
Determinant factors of pull-up performance in trained athletes.
J Sports Med Phys Fitness. 2016 Jul-Aug;56(7-8):825-33. Epub 2015 Jul 15.
(2) Andersen V1, Fimland MS, Wiik E, Skoglund A, Saeterbakken AH.
Effects of grip width on muscle strength and activation in the lat pull-down.
J Strength Cond Res. 2014 Apr;28(4):1135-42. doi: 10.1097/JSC.